「こちら、うちのギルドに加盟希望のイーリスさん。テストってわけじゃないんだけど、模擬戦闘をお願いできないかな」
「えっと……このちっちゃい女児とですか?」

 ソル君の感想はもっともだ。誰がどう見てもこのネコミミ少女は10台前半にしか見えない。
「ちっちゃい言うなー! これでも19歳のレディよー」

 がっしゃーん!

 ソル君が盛大に吹っ飛び、テーブルを派手に倒した。
「じ、19歳だと……?! これが年上?!」

 そう、そのリアクションが見たかったんだ。そうだよね。そうなるよね。19歳なんて信じられないよね。
 内心、期待通りのリアクションで嬉しかったのだけど、これ以上イーリスさんの機嫌を損ねるわけにもいかないので、話を進める。
「流石に君の剣を使うわけにはいかないから、こっちの剣を使ってくれるかな」

 平常心を装い、剣の『柄』だけを鞄から取り出す。不思議そうな顔をしているソル君をよそに、彼の剣に『柄』を当てる。

 フッ

 一瞬でソル君の剣と、そっくりな剣が出現する。

「僕のコレクションの1つ、修練用マジックアイテムの『ダミーウエポン』。触れた武器とそっくりのイミテーションを作り出すアイテムで、重さや手触りなんかを100%再現するけど、生き物には全くダメージを与えられないんだ。当たってもケガしないから、外で思いっきり振り回してもいいよ」
「へー……さすが、マジックアイテムオタクですね」
「そこは、コレクターって言って欲しいかな」

 小さい頃から冒険者に憧れていたけど、力もなく、魔法も使えない自分の非力さに嘆いていたときに、見つけたマジックアイテム。力や魔力が無くても、使い方次第でそれ以上の力を発揮するマジックアイテムにハマり、いつの間にか大量に集めていた。

 ガスッ

「あ……」

 音のした方を向くと、小さく呻くソル君。そして、足元に転がる壊れた椅子。
「そうそう生き物にはダメージを与えないけど、生き物以外には本物同様にダメージを与えるからね」
「……」
「修理代、給料から引いとくね」

 顔が引きつっているソル君はとりあえず置いといて、
「イーリスさん、お待たせ。そっちに庭があるから、ソル君と戦ってくれますか」
「うん、わかったー」
「イーリスさんは、武器とか要らないんだよね?」
「うん、重いのとか難しいのとかはムリー」

 3人で庭へ移動する。広くはないけど障害物などが何もないので、1対1で戦うくらいのスペースはある。
「そのダミーウエポンは5分で消えちゃうので、消えたら戦闘終了です」

 まだ引きつったままのソル君がダミーウエポンを構える。本来の剣と同様に、両手持ちの上段構え。一方イーリスさんは、獲物に飛びかかる猫のように、しゃがんでいる。
「それでは始めっ」

 開始の声と同時に、イーリスさんが地面を蹴ってソル君の足元へ飛び込む。

「はぁっ!」

 ソル君が上段に構えた剣を、足元のイーリスさん目がけて振り下ろす。しかし、イーリスさんの動きが段違いに早く、既にイーリスさんが過ぎ去った後の、何もない空間に剣先が振り下ろされる。

 イーリスさんはソル君の股の間をすり抜け、膝の裏へチョップ。体勢を崩したところで、腰を軽く押すと、ソル君は簡単に倒れた。
「まだ続けるー?」

 イーリスさんは、息一つ乱さず告げていた。